夢を追うすべての人へ

本日、トヨタ自動車などが出資する未来創生ファンドやSBIグループなどから、総額15億円の資金調達を実施したことを発表しました。これまで調達してきた金額は合計3億5千万円程度なので、ナイルとしては初めての、いわゆる「大型資金調達」となります。

良い機会なので、なぜ私がナイルという会社を起業し経営してきたのか。そして、今後どのように事業を展開し、何を実現しようとしているのかについて書いてみようと思います。

死への想いと世界を変えられていない事実への葛藤

私が中学生の頃、祖母が亡くなりました。

祖母は小学校の教師で、葬儀には教え子の方など多くの人々が参列し死を悼んでくれました。多くの方が祖母を惜しみ、泣いてくれるのを見て、人が生きて思い出を人に遺すことの尊さを私は知りました。

一方で、感じた恐怖もありました。それは、「いつか残された人々に忘れられてしまうこと」の恐ろしさでした。おこがましいかもしれませんが、「自分は周りの人々に悲しんでもらえることを人生の意味にはできないな」と思ったのです。

結果、中学が終わる頃には、私にとっての人生の目標は、「世の中に残るものを作ること」になりました。自分の生きた証を、自分が死んだ後の世界に残せるような人間になりたいと思ったのです。

この強い想いが起業の原点となり、2007年、私は大学在学中にナイルを創業しました。
しかし、今振り返ってみると、2007年当時の私たちのやり方は利口とは言えず、起業した後の数年間は本当にお金に苦しみ続けました。

銀行から借りられるだけお金を借り、2009年の時点で学生にして数千万円の借入をし、大きな事業規模を目指してひたすらにもがいていました。しかし、結果は出ず、売上や利益も思ったように伸びません。

「もっと世界を変えるようなことをしたい、しなければ」。
そんな想いばかりが募っていました。

ですが、そのための道筋は見えず目の前の事業を伸ばすことばかりに精一杯な時期が続きました。

デジタルマーケティングというテーマで事業を伸ばし、企業として安定したのちは、当時新たな潮流であったスマートフォン領域に着目。2012年よりスマホアプリ発見サービスとして「Appliv」をリリース。2015年にはApplivの海外展開も開始しました。

Applivは順調な成長を見せ、現在では月間1,000万人近いユーザーが利用するサービスとなりました。海外展開については思ったような成果が出せず、撤退となってしまったものの、国内の利用ユーザー数は大きな伸長を見せ、今年度は売上高成長率としても非常に大きな数字を見込んでいます。

こうしたメディア事業の成長も寄与し、ナイルは事業成長を続け、12期連続での売上成長を達成するに至りました。また、既存事業においては一定規模の利益も計上することができるようになりました。

しかし依然として、私の葛藤は続いています。
「自分はまだ世界を変えられていない、何かを残せていない。なのに、時間はどんどん過ぎてゆく。自分は死に近づいていく」という焦燥感は消えることがありません

「メメント・モリ」という言葉があります。
ふと、自分の死を想う時、「何ができたら満足か」と自らに問いかけます。

私の答えはいつも、「心に感じる強い手応えを得て死にたい」です。

「自分はこれだけのことを世の中に残すことができた」という強い手応えが、私にとっては死ぬ瞬間にとても大切なことのように思えるのです。

だから、自分の死後、10年後ー50年後ー100年後の世代の人たちに、「これがなかった時代なんて信じられないね」「あの会社が日本から生まれたなんて誇らしいね」と言ってもらえるような、「100年後の世界に贈る事業」を作りたいと強く願っています

もしかしたら多かれ少なかれ全ての起業家がそういうものなのかもしれませんが、私の場合は夢の実現に向かう中で生まれる心の葛藤__現実と理想とのギャップを埋めようとする気持ちが、戦う力になっているような気がします

そして、この気持ちが、新たな事業への意欲源泉となり、挑戦したテーマがあります。
それが自動車。モビリティ領域への挑戦だったのです。

次の100年において、日本が「モビリティ先進国」となる世界を作りたい

自動車産業は、日本の最大産業です。全労働人口の10%近くが自動車関連産業に従事しており、多くの雇用を創出しています。

トヨタ自動車をはじめとした自動車メーカーはグローバルに活躍し、多くの国で日本車が走っています。そして、「日本の自動車の品質は素晴らしい」という評価を世界中で獲得し続けてきました。少なくても過去十数年間に渡り、日本は間違いなく「自動車先進国」であり、世界から脚光を浴びる存在であり続けました。

しかし現在、この状況には明確に翳りが見られます。

コネクテッドカーや自動運転、ライドシェアリングや電気自動車など、過去100年には見られなかった様々な技術革新・サービス革新の波__モビリティ革命がこの産業に押し寄せ、自動車産業ヒエラルキーの頂点にある自動車メーカーをはじめとした全てのプレイヤーが、次の十数年に起きるゲームチェンジへの対応を模索しています。

また、残念ながら日本社会は新たなモビリティサービスへの受け入れについて、非常に不寛容な社会だと思います。

Uberをはじめとしたライドシェアリングはいまだに日本で認められていませんし、過去に作られた法律に縛られ、新たなモビリティサービスを設計するにあたり様々な制約が付きまといます。こうした背景もあり、自動車というテーマで事業作りに取り組む「自動車関連ベンチャー」の数は少なく、米国をはじめとした世界の様相とは大きな乖離があるのが現状です。

私たちが新規事業として2018年1月から開始した「マイカー賃貸カルモ」は、まさにモビリティ革命をテーマにした事業です。上述した起業の動機や抱え続けてきた葛藤も相まって、今まさに急変する自動車という領域において、「自動車と人の新たな関係性を作りたい」「次の100年においても日本が世界に冠たる自動車産業を持つ国で在り続けられるようにしたい」という強い想いを私は持っています。

今回調達した資金は、こうした想いを実現するために投資頂いた資金です。私たちはその全てを、モビリティ革命に投じます。そして、100年後の人々がこの時代を振り返った時に誇りに思うような、社会に根付く事業を作り上げていこうと本気で考えています。

「マイカー」というテーマに着目

近年、日本で話題になることが多いのは、タイムズカープラスなどをはじめとしたカーシェアリングですが、カーシェアリングはその事業構造上、都市部に優先的に立地しています。一方で、日本の多くの人口が住まうのは地方や郊外であり、東京都心のような地域に居住する人口は一部に過ぎません。

日本の地方や郊外、地方都市の都市設計は、人々がマイカーを持っていることを前提としたものとなっており、事実として人口100人あたりのマイカー保有率が5割を超えている県が47都道府県のうち31を占めているという現状があります(ちなみに東京における保有率は約16%です)。

こうした地域においては、マイカー保有がクルマ利用の圧倒的多数を占めている状況が依然として続いています。つまり、いわゆるシェアリングビジネスではなく、クルマ所有に関するユーザーニーズの方がはるかに強い状況があるのです。

他方、「マイカー」という概念は、徐々にそれ自体が変化を遂げようとしています。

カーシェアやレンタカーの浸透も手伝って、以前であれば「購入し所有する」ことを前提としたクルマという商品は、徐々に「利用するもの」という考え方に変わりつつあります。この流れは、名義としての所有にこだわるのではなく、「マイカー」として「常に使える状態にあれば良い」という考えを明確に後押ししていると思います。

その証拠に、いわゆる車の賃貸であるカーリースでマイカーを保有する方々の数は急増しており、矢野経済研究所によれば、個人向けのカーリースで保有されているクルマの数は2017年〜2022年の5年間で約4倍ほどの規模にまで成長すると言われています。

地方在住者のニーズに応え、カルモをリリース

こうした状況を踏まえ、私たちはマイカー賃貸カルモを立ち上げました。カルモは、ネット完結で申し込みができ、月額定額料金でマイカーを保有できる、車のサブスクリプションサービス(カーリース)です。

車のサブスクリプションといってもIDOMが展開するNORELやトヨタ自動車が展開するKINTOとは違い、〜9年という長期にわたり月額定額料金でマイカーを持ちたい方をターゲットとしたサービスとなっています。ネットならではのリーズナブルな料金感が人気を呼び、リリース後の約1年間で累計3,000件の申込を獲得してきました。

「マイカー」を携帯電話と同程度の料金で

マイカーは購入するもの、所有するものという概念を変え、マイカーを所有物ではないもっと気軽な形で利用するようなサービスを作り、誰もがマイカーで自由に旅行や買い物、通勤を楽しめるようにしていきたい。こうした想いで、私たちは事業に取り組んできました。

しかし所有から共有へというトレンド以外にも、サービス展開をする中で重要な社会課題が見えてきています。それはシンプルに車という商品が人々にとって高価であるということ、そしてローンやリースなどの金融商品を誰しもが利用できるというわけではないということです。

「クルマ離れ」が叫ばれて久しいですが、この状況の背景には、1998年以降明確に低下傾向となっている日本の所得水準と、これに対して変化しない自動車価格、そして金融サービスとしての多様な選択肢が日本に不足していることが挙げられるのではないかと思います

日本の二人以上の世帯支出の平均を見ると、自動車関連費用は約8%を占めています。こうした大きな消費を占める自動車について、「安くクルマを持ちたい」「気軽に持ちたい」という欲求があるのは必然であり、現在のマイカー購入はそうしたニーズを満たすことができているとはとても思えません

こうした課題を鑑み、今後カルモでは中古車版のリリースを通じて、携帯電話代と同程度の月額料金でマイカーを保有することができるサービスの提供に挑戦していきます

また、現時点では検討レベルではありますが、既存の金融システムにおいては与信の観点からローンやリースなどを活用できなかった方々に向け、クルマをサブスクリプション形式で提供していくモビリティ×Fintechといった領域にも目を向けていこうとしています。

カルモは、現時点では累計数千件のお申し込みを頂いたに過ぎないサービスです。しかし、今後数年で、年間数十万件のお申し込みを頂き、年間で数万件単位の契約を頂けるような事業へと進化させていく心算です。

そして、多くのマイカーをお持ちになるユーザー様とつながりを作りながら、もっとモビリティ革命のど真ん中を射抜くような試み(4%の時間しか稼働していないと言われるクルマを複数人で共同保有するサービスや個人間でのカーシェアリングなど)に私たちは挑戦します。

次の100年においてスタンダードとなるような「自動車と人の新たな関係性」を生み出し、私たちのサービスを通じて人々を幸せにする。そんな事業を、強い覚悟を持って作り上げていきます。

夢を追うすべての人は、挑戦者

私は夢を追う人が大好きです。

起業家であろうがなかろうが関係なく、人が夢の実現を目指した時、そこには常に壁があり、行く手を阻みます。夢を成し遂げようとすることは挑戦するということであり、挑戦には障害がつきものです。

その障害を乗り越えようともがく姿に、人間の美しさの一つの側面があると、私は心から思っています。

一方で、挑戦するということは苦しみを伴うことでもあります。

障害に直面した時、どうすればいいのか。
そして障害を前に失敗した時、それをどう捉えればいいのか。
結果として、今の自分と理想の自分の乖離に苦しむ時、それをどのように受け入れ、前に進んでいけばいいのか。

これらは、夢を追うすべての挑戦者にとって、重要なテーマです。

私は起業してからというもの10年以上、このテーマに向き合ってきました。そして、自分の中でずっと大事にしてきた考え方があります。記事の最後に、その考え方を綴り、筆を置きたいと思います。

自分を信じる、強く想う、歩みを続ける

頭が良い人は、常に確率を考えます。

「こうした観点から、実現できないかもしれない」「できなかった時のために、こういう方向性も考えておかないと」などの思考はもちろん大事ですし、こうした考えを持たざるは蛮勇でしかありません。

ただ、「勝負する」と決めた時は、こうした考えを持つことはマイナスに働きます。
「絶対にこの商談で結果を出さなければならない」という場面では、「できないかもしれない」という合理的な思考は不純物でしかないのです。

必要なのは「絶対にやってやる」という強い想い、「できて当たり前だ、やるんだ」という自分を鼓舞する気持ちです。

こうした強い想い、根拠なき自信こそが、言葉に力を生み、結果をもたらすということが明確にあります。スポーツ選手が「自分は勝てる」と自分に何度も言い聞かせて競技に臨むように、「できると信じること」の力は本当に大きいのです。

もちろん、できると信じて臨んだとしても結果として負けることもあります。立て続けに負けてしまい、弱気になってしまうこともあるでしょう。それでも諦めずに腐らずに、「自分を信じ続けること」だけが、機会を掴み飛躍するために大切なことなのではないでしょうか。

スタートアップは、湖面を優雅に泳ぐ白鳥のようなもので、見た目は良くても泥臭いことばかりです。私たちが本日発表した資金調達についても、そこに至るまでの間に、たくさんの障害・苦難がありました。

海外展開がうまくいかず、海外拠点を撤退した際には多くの従業員が会社を去りました。事業が上手くいっていない時に資金調達活動をした際には、出資してくれる会社が見つからず、忸怩たる思いをしたこともありました。そんな中でも、経営陣で何時間も膝を付け合わせて話し合い、「自分たちならできる」と信じて、歩み続けてきました。

そうした歩みがあっての今日なのです。今日という日は、単に良いニュースを世の中に出せた日なのではなく、自分たちならできると信じて歩み続けた日々における一つの出来事を、最も良い形で切り取って世の中に発信した日でしかないのです

夢を追うすべての人へ

私と同じように夢を追う、すべての人に伝えたいことがあります。
笑われたっていい。無理だと言われてもいい。夢への道筋を不安に思ってもいい。歩みを続けましょう。

そして、勝負の瞬間には、自分を信じ、強く想い、突き進みましょう。

社会に根付く仕組みを作り、人々を幸せにする。
モビリティ革命に一石を投じ、次の100年を代表するモビリティ事業を作る。
そして日本を100年後の世界においても、モビリティ先進国と言われるような国家にする。

こうした夢に向けて、私もまだまだ全くの道半ばですが、自分と、関わってくれる全ての人々を信じて、未来へ進みます。

この記事を読んでくださった、夢を追うすべての人の夢が、実現することを願っています。
本日、私たちが歩んできた道のりの瞬間を切り取り、皆さまにお知らせすることができたことへの感謝に寄せて。

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