manaveeについて

manaveeというサイトがある。

ざっくばらんに言うと、「全国の大学生が教える勉強動画を見ながら受験勉強できる」というサービスだ。
しかもturntableのように仮想現実っぽい仕組みも採用していてエンタメ性もある。極めてニクいコンセプトだ。

※参考記事:だれでも無料動画で受験勉強できる『manavee』が凄すぎる

ところでこのサービスを初めて知った時、私は自分が起業した当初のことを思い出さずにいられなかった。
Volareは東大生講師が教える受験動画配信サービスで大敗北を喫した会社なのだ。

起業した当初、ビジネスの「ビ」の字もわからなかった私は、東大生という自分の強みを活かそうと家庭教師事業を始めた訳だが、すぐに「この事業を続けていても、世界を変えるような会社は作れない」という事に気がついた。

そこで当時21歳だった私が考えたのは、東大生の授業を動画で配信する「WEB予備校」のようなサービスを作ろう、というものだった。これなら教育事業で蓄積している東大生の講師データベースを持っているという強みも活かせる。

しかも大学受験において、地方の学生がどれだけ割を食っているかという事を私は知っていた。東京と違い、地方には塾がない地域もある。仮にあったとしても、受験に関して保有するノウハウは絶対的に乏しい事が多い。

そんな中でも、「赤本だけとりあえずやっときました」みたいな受験対策だけで、サクっと東大に合格するヤツは沢山いたので、もし地方にもっと受験勉強のためのインフラや情報が整っていたら、もっと多くの学生が東大や自分の望む進路に進めるんじゃないか。そう思っていた。

そして企画から3ヶ月後、私たちは「WEB予備校 楽スタ」というサービスをリリースした。
「月額8,300円で東大生が教える授業動画を見放題!テキストもダウンロードし放題!」というサービスだ。

当時の動画サイトとしてはUSENが運営するGYAOが有名だった事から、UI面でもGYAOを参考にしたデザインのサイトにした。※今色々な方面で活躍されている方が動画に出演されているので、出演者の顔は黒くしておきました。


「この楽スタによって受験教育の地域間格差を是正できる」と私たちは信じていた。
しかし結果として大失敗に終わった。何故か。

まだ未開拓なWEB×ITを目指す起業家の方が少しでも参考にしてくれることを祈りつつ、当時の事を思い出しながら、いくつか失敗談を書いてみようと思う。

①消費者向けサービスで、開発の外注化をしたこと

私たちの中にはエンジニアやデザイナーはいなかったので、全てのサービス開発を外注した。

教育に限った事ではないが、toCのサービス開発ではユーザーからの反応を確認してからサイトを改善するまでの速度が成功と失敗を分ける分水嶺であることは間違いない。私が知る限りシステムもデザインも外注して成功したtoCサービスは存在しない。

起業家がプログラマーやデザイナーである必要はないが、ボードメンバーには腕のいいプログラマーとデザイナーは必須。彼らを集められないとスタートすら切れないと考えておいた方が良い。また、起業家が開発もデザインも出来ないのならば高いゼネラリストとしての能力が問われる事は言うまでもない。

②コンテンツを自前で制作した事

予備校事業において、絶対に外してはならないポイントは「授業の質」だ。それはWEB上の予備校だろうと変わらない。

私たちは「東大生が教える」という事にフォーカスしすぎて、「東大生の授業の質」については高める事が出来なかった。また自前でコンテンツを制作する事にこだわる余り、授業1つ1つにかかる予算が結構な金額になってしまった。もし仮に、もう一度WEB予備校事業をやるなら「善意の一般ユーザーが教える形式」にするか教育コンテンツを保有する「予備校と提携」するかしかないと考えていたので、この点manaveeはよく考えられていると思う。

③収益化を急ぎ過ぎたこと

開発とデザインを外注し、授業コンテンツの制作にもお金をかけたため、一刻も早く資金を回収したかった。だから無料コンテンツの数を限定して有料コンテンツを増やし、サイトにアクセスを集めるためにさらに広告投資をしてしまった。

結果として、サイトにユーザーは来てくれるもの有料会員に転換しないというお決まりのパターンに陥ってしまった。楽スタのモデルでやるなら、教科を限定する事で必要なコンテンツ数を絞り最高のコンテンツを作って授業品質で勝負しなくてはならなかった。

④1人で授業を受けるのはつまらない

楽スタの授業の形式は、「動画を選んでテキストを読みながら、講師の授業を見る」というものだった。塾や予備校、学校と違い、楽スタには「友達・仲間」という概念が欠落していた。つらい受験戦争を続ける上で、こうした存在はものすごい大きな意味を持つのだと思う。

一人で授業を受けるより、皆で受けた方が楽しい。そういうことだ。

manaveeは全部クリアしている

当時を思い出しつつ楽スタの失敗要因を色々書いてみたが、manaveeは上記の課題を全てクリアしているように感じる。

サイトを見た限り自作のサイトなのは明らかだし、コンテンツについても大学生から投稿してもらう事で、質が高いものを安価に調達している。収益には現状こだわりがないようだ。そして何より友達と授業を受けているようなUIは素晴らしいと思う。

ここまで書いて思う事は、ぜひこの事業をやりきって欲しいという事だ。私たちは諦めてしまった。教育事業から撤退し、現在はSEO、今年には別の領域でのtoCサービスを開始しようとしている。勝負を諦めたわけではないが、少なくても勝負のテーブルは変えてしまった。楽スタも、やりきれば成功したかもしれない。しかし成功率を考えれば、撤退が正しい判断だったと考えている。

しかしmanaveeは違う。時間と労力をかけて大きくしていけば必ず日本の教育界に大きな貢献を出来るサービスになる。サイトを運営しているのは東京大学の3年生ということだが、ぜひとも事業化を目指して取り組んで欲しい。収益をどこで稼ぎ出すかという課題は勿論あるだろう。だが、WEB予備校の構想実現に失敗した起業家として、彼らの成功を心から応援したい。

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企業文化の話

「企業文化」という言葉がある。

「企業文化なんて意味ないっしょ」という人がいるが、私はとても大事なモノだと思っている。
企業文化は組織全体を満たす気風のようなものだが、Volareでは創業時から私を中心にその定着に取り組んで来た。

「こういうメンバーが集まる会社にしよう」という想いが企業文化となり仕事の流儀になっていく。企業文化が定着すると、共感してくれるメンバーが集い出す。すると良い事業が生まれる。よって利益が出せる。単純な話である。

Volareが設定している企業文化は、「フェア、フラット、多様性」の3つだ。

「フェア、フラット」とは、役職者も新米も平等な立場から意見を戦わせる事ができ、社内から上がる意見やメンバーの活躍を出来うる限り公正に評価するということ。「多様性」とは、様々なバックボーン・職能を持ったメンバーを集め、またそうしたメンバーが互いの個性に刺激を与えあうということだ。

この企業文化に則り、Volareには遠慮をする人が少ない。会議をしていて上司の意見に反対意見が飛び出すことなんて毎回起きているし、上司は反対意見の方が優れていればそちらを採用する。私も例外ではなく、私が自信満々に繰り出したアイデアに、「微妙ですね」という冷ややかな反応が返ってくる事もしょっちゅうだ。超高学歴な人間がいる一方で、ホームレス経験者が3人もいるし、国籍の違うメンツも増えてきた。今後も国籍は問わず採用を続けていく。

こうした独自の企業文化を愛するメンバーが互いに遠慮する事なく意見をぶつけ合う空間は実に刺激的で、そういう会議に参加する事は私にとって最高に楽しい時間になっている。保身に走るようなヤツじゃなく、自分のレベルを高めたい人間なら誰でも楽しいと感じるんじゃなかろうか。

ただ、こうした企業文化も永遠に続く事を保証されている訳ではない。例えば新しいメンバーが増えるに伴い、徐々に文化が薄くなっていく事がある。メンバー一人一人が企業文化を言葉に出せないと、「なんとなく」のイメージしか伝わらないのだ。それではいけないと思う。

もうすぐ3月も終わる。

facebookでは、私の後輩達が大学の卒業式の写真をアップしている。ああ、卒業からもう3年も経ったんだなと懐かしい気持ちになる。

3月が卒業の季節なら、4月は新たな人生を踏み出す季節だ。Volareにも新卒メンバー6名と中途採用メンバー4名が加わり、新体制での4月を迎える事になる。中途メンバーのうち2人は、別に薦めてもいないのに大学を中退してくるというスタンドプレーを行った強者だ。

こういう場面で新たなメンバーに企業文化を理解してもらう事はとても大事で、それが出来ないといつまでたっても新たな採用が出来ない。1人1人としっかりコミュニケーションを取り、Volareの誇るべき企業文化を心で理解してもらおうと思う。

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脱線

Volareの会議はよく脱線する。

別に狙って脱線している訳ではない。アジェンダもしっかり作るしそれに沿って話をしていくのだが、誰かが「そもそも論」を投げかけると皆がそれに食いついてアジェンダからどんどん話が逸れてしまう。

この間など、新規事業の開発会議でボタンをクリックした時のJava Scriptの動き方について話していたら、「位置はそこでは相応しくない」「そのボタンは本当にいるのか」という話に発展し、結局そのボタンは日の目を見ないまま葬られてしまった。

しかし、それで良いと思っている。

就活のグループディスカッションや大学生が催すビジネスプランコンテストの現場では、「議題から逸れない事」を説く。ファシリテーターが会議を主導して、それに基づいて議論が進行する。時間通りに会議が終わり関係者の負担にならないコツだから、という事だろう。

しかし「30分で結論まで詰めなければならない」場合ならともかく、全ての議題において、馬鹿の一つ覚えみたいに硬直的なルールを当てはめるのはいかがなものか。

そのまま突っ走ってもしょうがないのなら、今まで走ってきた道を皆で振り返ってみるのもいい。
「あの時にこういう道もあった」という発見があり、そこまで戻ってもう一度走り直す良い機会になる。

我々から見れば一つのボタンでしかないものが、ユーザーにとっては複雑でとっつきにくい機能に見える事もある。そのボタンが原因でサイトを使ってくれないユーザーを生むかもしれない。そんなもの、無理矢理サイトに搭載するよりもいっそのこと無くしてしまった方がいいではないか。
無くす事が決まっただけで、先の会議は有意義だったと思う。もちろん毎回これでは話が進まなくなってしまうが。

経営に携わった事がある人なら誰しも経験がある事だと思うが、経営者には眠れない夜というものがある。
A案とB案とC案のどれがいいかを自問自答し、誰にも相談できず悩んで考え抜く。
結果として導き出された結論がD案だったなんてのはよくある事だ。

ベストなモノを作り出すには回り道がつきものだ。
会議にしろ何にしろ、字句通りに受け取って手法論ばかり振りかざす輩が多いが、
定石だけを打って勝利した棋士はいない。

通り一辺倒な事ばかりほざく常識人は無視して、自分の信じる道へと脱線してみるのも悪くない。

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オフィス限界突破

Volareはオフィスが大塚にある。

「大塚なんて知らん!」という人のために補足すると、大塚は山手線池袋駅の近くにある風俗街で有名な街だ。

なぜ大塚にオフィスを構えているかというと、私が大学に通いやすかったからというのが主な理由だ。東京大学の本郷キャンパスがある本郷三丁目駅には新大塚駅から3駅で行ける。

そんな大塚で会社を始めて早5年となるわけだが、そろそろオフィスが手狭になってきたなと感じたのが昨年の初頭。そこで10月に大家さんに無理をいって別のフロアも借りさせてもらったのであった。※それまでは1フロアで仕事をしていて会議室が少なく手狭だった。

1フロアの増設に踏み切った私は調子に乗り、1フロア丸ごと会議スペースにしようという構想をぶち上げた。これまでに借りていたフロアは全てワークスペースにし、新しく借りたフロアは見栄えの良い会議室を集中させるという戦略だ。

この構想をごり押しして決定させた私は、オフィス内装にも相当こだわった。床は全面キレイな青色にし什器類にもお金をかけた。

10月中は役員のO谷とN澤が躍起になって内装業者と折衝し、10月の末には会議室が完成。皆が待ちに待ったセミナールームも配備された。

Volareは昨年結構な頻度でセミナーを開催していて、セミナールームのない私たちは毎回会場を借りなければなかったから、自分たちのセミナールームを持つ事を切望していたのだった。

ワークスペースとなるフロアには机と椅子が敷き詰められ、50人以上の稼働にも耐えられる体制となっていた。

「これで今年一杯までは踏ん張れる」。誰もがそう思った。

ところがそうは問屋が下ろさなかった。2013年度の新卒採用に向けたインターン生の事を誰も考えていなかったのだ。というか来たとしてもせいぜい同時に2、3人だろうとタカをくくっていた。これが明暗を分けた。

結果としてインターンは多い時には10人近くになることが判明し、新年早々私たちは顔が青くなった。どう考えても今のオフィスの中には入らない。残された選択肢は、結局1回しか使われていないセミナールームを潰すという道だけだった。

何事も前向きに捉えればなんとかなるものだ。私は「エンジニアとクリエイター専用のオフィススペースを作ろう。ヤツらの能率も上がるだろう」と即座に陽転した。特に他の選択肢も持たないメンバーはうんうんと頷く。

結果今月半ばにはセミナールームからは椅子も机も駆逐されてしまった。代わりに少しだけ上等な机や椅子、パソコンが搬入されエンジニアとクリエイター用のワークルームが出来ていく。一時的にキレイだった部屋はあっという間に戦闘的なパソコンとホワイトボードだらけの部屋になった。

エンジニアは喜んだ。営業のテレアポが聞こえない環境で開発が出来るのは結構効率が上がるものらしい。
その笑顔が少しだけ嬉しかった。少しは開発に貢献出来ただろうか。

セミナールームがなくなったのは悲しいが、結果として開発のペースは上がったようだ。一度しか使われなかったセミナールームと開発の効率とどちらを優先すべきか。答えは明白だ。セミナールームは潰して良かったのだ。

結局のところVolareのような企業にとって、いつどんな人が入社するかなんて事は、いつ鍋に春菊が入ってくるかと同じ位読めない事なのだと思う。いつ入ってくるか分からない春菊のために鍋のスペースを空けておくなんて不可能だが、それでもVolareは常に優秀な異才を欲しているし、そういう人ならいつでも歓迎する。

ワークスペースが手狭になっていく事やセミナールームがあるかどうかなんて、優秀なメンバーと働ける事を思えばウンコみたいなもんだと改めて思う。セミナールームがあるからといって優秀な人が入ってくるわけではない。結局キレイなオフィスに満足するなんて、キレイなキャンパスに惹かれて大学に入るくらい馬鹿げた事なのだ。

Volareは今後も優秀な異才を採用する事に全力を尽くす。
言い換えればそういう人に好まれる組織を目指す。

オフィスは少しだけバタバタしているかもしれないが、満足させる自信はある。

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ホワイトデーインフレーション

3月14日はホワイトデーだった。

分かり切っている事だが、ホワイトデーはメンズが30日ほど前にチョコをくれた女性に対し、翌年もチョコをもらえる事を祈願してお返しをする日だ。

Volareでは毎朝「朝礼」と呼ばれる会があって、社員が一堂に会し、社員が持ち回りでショートプレゼンテーションを行うのだが、今年の3月14日は去年とひと味違った。

朝礼が終わりにさしかかった段になって、役員のN澤が「今日はホワイトデーだから女性社員のみなさんにお返しのチョコを買ってきました」などとほざく暴挙に出やがった。

こういう時の女性の反応は一様で、
「N澤さんえらーい」「すごーい」などとN澤を崇める始末。

このN澤の凶行によって社内の男性社員に衝撃が走り、皆お返しにN澤と同等の商品を買わざるを得なくなった。当然私も朝礼が終わったその足で会社の近くのKージーコーナーに行き、一番上等なクッキーの詰め合わせを購入した。

多分今年のホワイトデー、Volareの女性社員は例年に類を見ないお返しの量を獲得したんじゃないか。

かぶせて書きたい訳じゃないが、どんな事であっても組織の中に「俺はこれだけの事をやったんだ!」と金字塔を打ち立てるヤツの存在は常に大事だ。

そういうヤツがいる事で、周りの人間がソイツに追い越し追い抜こうと頑張るし、結果として全体の能力や成績が引き上げられる事というのは往々にしてある。

Volareではこれまで何人かのメンバーがそういう働き方をして、周囲を多いに刺激しつつ組織の中でのし上がってきた。そして今年はKージーコーナーに走ったヤツの数より、そういうメンバーの方が多くいるように思う。

きっと今年は何人ものヤツがのし上がる。

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