Nyleはビジョンとミッションを変更しました

2018年8月、Nyleはミッションとビジョンを変更した。加えて、「経営方針」という概念を作り、これについても新たに制定した。この記事では、どのような意図でミッションやビジョン、経営方針を策定したのか、そして現時点で得られた効用は何かについて書いていきたい。

Nyleにおけるミッション、ビジョンの関係性

ミッションとビジョンについて語るには、まずはNyleにおけるミッションやビジョンとは何を意味するものだったのか、記さねばなるまい。過去10年において、Nyleでのミッションとビジョンは、下記のような関係性を持ち制定されていた。

つまり、ミッションとバリューはある種「表裏一体」な概念として考えられていた。

ミッション達成を目指していく中で、企業としての理想像(ビジョン)も体現されていくいう考え方で、ミッション達成が企業の至上目標であるという前提はありつつも、ビジョンもほぼ並列的な概念として重視されていたのだった。

そしてその上で、Nyleのミッションとビジョンは下記のようなものであった。

ミッション:新しきを生み出し、世に残す
ビジョン:世界で最も尊敬される企業となる

徐々に顕在化してきた違和感

約10年前に制定した上記のミッションとビジョンについて、私はここ2年ほど違和感を感じるようになってきていた。

もちろん、私自身が経営者としてその考え方を変化させて行く中で、20代前半で決定したものと乖離が出てくるのは当然のことだろう。当時は大変カッコ良いと考えていたワーディングについても、今見ると普通に結構恥ずかしいと思うものである。

主には、
・現在のミッションのワーディングには、利他性がないのではないか
・ミッション、ビジョン共に抽象度が高すぎて、メンバーに腹落ちさせられていないのではないか
・ミッションとビジョンが対等であることで、逆に目指すべきものが2つあるように感じ、意思決定の軸がぶれるのではないか
・そもそも尊敬される企業になりたいんだったら、尊敬される企業となるとか言わない方が良くね?
などの違和感、課題間について、経営陣でも議論が行われるようになり、今回のビジョン、ミッションの変更に至った(1年半以上に渡り役員合宿などで議論を重ねた)。

新たなミッション、ビジョンの関係性

経営陣で議論を重ねて行くうちに行き着いた結論としては、「そもそも論としてミッションとビジョンの関係性を見直すべきではないか」というものであった。

様々な企業について調査したが、おおまかな傾向は見られるものの企業によってミッションとビジョンの関係性は考え方が違う。であれば、「Nyleにとって最も経営陣が腑に落ちる関係性を定義すれば良いのではないか」という結論に至り、Nyleにおけるミッションとビジョンの関係性を下記のように決定した

企業にとっての最終ゴールである社会的使命(ミッション)の実現に向けて、「当面目指すべき理想像」としてのビジョンを制定した、ということである。このような形にすることで、もともとのミッション、ビジョンの関係性に対して抱いていた違和感の大部分は解消することができたように思う。

具体的には、
・長期的に目指すゴールがミッションに一本化され、最も重要なものがメンバーに分かりやすくなった
・ミッション達成の通過点としてのビジョンに、より具体的な言葉を使うことが可能となった
・結果としてメンバーに会社として目指してもらいたい方向性をクリアにアウトプットできるようになった
というのが、現時点での手応えである。

Nyleの新たなミッションとビジョン、そして経営方針

このようなミッション、ビジョンの関係を前提としつつ、Nyleが制定した新たなミッション、ビジョンについて発表したい。

新ミッション:社会に根付く仕組みを作り、人々を幸せにする

ミッションとしては、基本的には旧ミッションである「新しきを生み出し、世に残す」において言わんとしていた、「世の中に残るモノを作る」というメッセージは言葉を変えて残しつつも(そもそもこれが私の起業の理由であるため)、「人々を幸せにする」という利他性の高い言葉を盛り込んだ。

どのような業種業界のビジネスにおいてもそうだが、「儲かるビジネス=人を幸せにするビジネス」ではない。これを理解していない企業は倫理観を失い、結果として人々のためにならない事業を行いがちである。

私たちNyleは、あくまでも「人を幸せにする」取り組みを通じて、社会に根付くモノを残していきたいと考えている。

新ビジョン:デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団

また、ミッションとビジョンの関係性見直しに伴い、ビジョンについては抜本的に変更した。

Nyleは企業向けのコンサルやメディアを手がけ、今年からは自動車マーケットにも参入するなど、「色々手を出している会社」である。

だがNyleの戦略として一貫してあるのはデジタルのマーケティング知見を生かすという基本戦略であり、社内で醸成したマーケティング力を活用して事業をやっているという点が特徴となる。

加えて、私たちは自らを「事業家集団」と定義し、数々の事業に挑戦していくことを宣言する。

この言葉を決めるにあたっては色々と議論があった。

「技術にしろマーケティングにしろ、エキスパートを目指す人は事業そのものには関心を持てない人も多いのではないか」という意見については確かにその通りかもしれないと考えており、迷いもあった。

が、現時点での結論としては「エキスパートは大歓迎。育成投資もしていくが、事業があってこその技術であり投資なのだから、全てのエキスパートに事業への関心も持ってもらいたい」という方向で、経営陣一同が一致している。

経営方針:100の事業を創出し、10の事業を世に残し、1つの事業で世界を変える

Nyleではこれまで、かなり厳選をして新規事業を検討、実行してきた。

しかし、これまでのやり方では、私たちが目指している規模感に到達するまでの速度感としてあまりにも遅きに失すると考え、今後はより多く打席に立ち、新しい事業開発に取り組んでいこうという意思決定を下している。

新しい事業の立ち上げには常に失敗も伴う。だが、失敗をするということに対し、それが当たり前であり許容すべきものであるということを明確にすることで、失敗すらも糧に変えていける組織が作られると私は思う

そこで、新たに経営方針という概念を導入し、数々の事業に取り組み、その中から10%で良い、世の中に残る事業や世界を変える事業を輩出していくのだ、という宣言を社内に行った。打席に何度も立つ、その中から一握りの大成功を得ていく、ということである。

企業におけるイデオロギーと経営者はどのように付き合うべきか

上記のような内容について、Nyle経営陣は非常に多くの時間を議論に使い決定するに至った。
今回のミッションやビジョン、経営方針という企業にとってのある種の「イデオロギー」の刷新が、どのように働くかはまだ定かではない。

だが、現時点で一つ言えることとしては、企業はこうしたイデオロギーとの向き合い方に妥協をしない方が良い、ということである。正直、Nyleの今回のイデオロギー変更はかなり遅かったと反省をしているのだが、それでも真剣に向き合い修正できたことは大変良かったと思っている。すぐに、感じられるメリットとして、下記についてはすでに手応えを感じているので共有しておくこととする。

①経営陣同士の視座観を合わせることができる
経営陣がどのようにイデオロギーを捉えているかがズレていると、どうしても日々のマネジメントアウトプットに影響が出てしまうと思う。私たちは1年半に渡り、あえて即決せずに議論を尽くしてきたことで、Nyleという会社が目指す方向性や守るべき企業倫理などについて多様な話し合いをすることができた。こうした視座のすり合わせによって、経営上の意思決定において「何を大事にすべきか」という観点での議論をする時間が良い意味で減ったように感じている。

②メンバーへの強いメッセージ発信を通じて覚悟を問うことができた
ミッションやビジョンの変更は、「Nyleに在籍するメンバーがNyleにいる理由」や「Nyleにいることで得られるであろうキャリア」について、ある程度揺さぶりをかけるものだと思う。今回の変更により、強く「この会社でやれることは楽しそうだ」と思う人もいれば「この会社の方向性は自分に合っていないのではないか」と思う人もいるだろう。仮に後者のようなメンバーがNyleを辞めてしまったとしても、それはそれで良いと私は思っている。同じ船に同じ志で乗れないのなら、志を同じくする別の船を探す方が良い、ということもある

また、上記の他にも、企業の方向性が明確化されることによる採用力強化などはかなりの確度で成果として得られるのではないかと考えている。

とはいえ、目指すものが抜本的に変わるわけではない

ミッションやビジョンが変わったとはいえ、それによって企業の目指す場所が全く違うものになったわけではない。

どちらかというと、自分たちが目指してきたものを言葉として再定義することで、より正確に、速度を上げて、目指す場所にたどり着けるようになる、というのがその本質だと私は考えている。

Nyleは引き続き、「デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団」として、事業に集中していく。

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カテゴリー: 組織, 経営