ソーシャルが支える中東革命は、ルターの宗教改革に似ている

最近地震の話題にお株を奪われている中東の政変。一連の革命。
この一連の革命について、私は巨大な歴史の転換点を告げる出来事のように感じている。

中東チュニジア、エジプトの長らく続いた独裁体制の崩壊。
現在もデモが続くバーレーン。そして激しい内戦となっているリビア。

これらの国々は全て独裁政治が敷かれていたという共通点がある。

多くのウェブ上の文献ではエジプトをはじめバーレーンもチュニジアも
親米政権の独裁国家であり、その権力はアメリカが支援していたという
前提で話を進めており、それは一定程度事実なのだろう。
まあリビアは別としても。

結局の所、
①アメリカの国益にイスラエルの国益は欠かせないものとなっている。

②イスラエルの国益のためにも、パレスチナ問題において
 アメリカはイスラエルを支持及び支援するのが基本。

③イスラエルがパレスチナ問題で有利に事を運ぶには、
 民主化されたアラブ国家では問題あり(当然)。

④アメリカの傀儡政権として独裁政権を支援し、見返りとして
 親米路線と対イスラエル融和姿勢を確保していた。

⑤しかし独裁=抑圧された人々がいる事を示しており、
 それが少数宗派であったり貧困層であったりした。

上記がざっくりとした今回の中東革命における前提なのかなと思う。

以上を前提に、中東革命が何故進行しているかと考えると「現政権に対する
フラストレーションから」と言えるのだろう。

「宗教的に虐げられている」とか「多数民族なのに少数民族よりも待遇が悪い」とか
それらは全てフラストレーションであって、今回はそれが形となって現れた、という事
であろう。

しかし、上記のフラストレーションは長年にわたってアラブ諸国に
蓄積されてきたはずだ。

何故このタイミングで?

という疑問こそが革命の一つの本質に関わっていると私は考える。

ソーシャルウェブがもたらした情報革命

今回の革命における起爆剤がソーシャルウェブであったことは疑いの余地がない。

FACEBOOKやTwitterといったサービスが普及した事で、
個人の情報発信力が飛躍的に増大した。

結果としてデモの集合場所や方針といった革命において重要な情報を政府の圧政下
でも伝播していくことが出来たわけである。

つまり「個人」が情報の「媒介」として機能し「情報が伝播されていく環境」。
それがソーシャルウェブがもたらした情報革命だろう。

同じような変化は過去にもあった

ソーシャルウェブがもたらした情報革命は、
「グーテンベルクの活版印刷技術がもたらした情報革命」とそっくりだ。

参考:グーテンベルクと情報革命 ―宗教改革に対する活版印刷の影響―

グーテンベルクが発明した活版印刷技術により、
聖書は聖職者や富裕層だけの物ではなくなった。

より幅広い層が聖書を手にする事が出来るようになったのである。

「聖書」という絶対的権力を持った情報を独占する事は大きな利権になる。

その「聖書」が民衆にまで降りてきた事は、
当時としては巨大な影響力のある出来事だったろう。

その後のルターの贖宥状批判に始まる宗教改革の過程において、民衆がローマ教会に対し蜂起
するための前提条件となったのが、聖書が聖職者だけのものではなくなっていた事であった事
(民衆が聖書を読み、宗教改革派の思考が民衆に広まりやすかった)を考えると、活版印刷技
術による文字情報の流通量の急激な拡大が、宗教改革を支えていたと言える。
まさに情報革命である。

参考:ルターの宗教改革

ソーシャルウェブがもたらす情報革命はどこに行き着くか

では今回のソーシャルウェブがもたらした情報革命は、何をもたらすのだろうか。

インターネットの普及によって、情報が伝搬する速度はルター時代の比ではない。
私たちは、地球の裏側で起きた出来事をその数分後に把握する事が出来る。
しかもテレビ放送や新聞ではなく、その地球の裏側にいる一個人によって。

この事実が結果としてどのような世界を導くのかは誰にもわからないだろうが、
多くの不均衝を無くす事に寄与するのは間違いないように思う。

誰もが、力ある主体の不合理・不条理を糾弾する事が出来る。
無理矢理に主張を圧殺し暴力に訴え続けるやり方は、多くの国において少なくても
得策とは言えない世界が来ているように思う。それこそ中東の革命を見る限り。

資金や権力のない力なき個人が、「情報」に関してだけは流通させうる力を持った
事は、今のところ彼らを守る為の防御壁として働いてくれるように感じられる。

ただ当然ながら懸念もある。
Twitterでは震災後に多数のデマも伝播した。
情報を発信する一個人が常に良識ある情報提供者とは限らない。

しかも情報の流通性が高められ、あっという間に世界に広がるソーシャルウェブの
世界においては、誤った情報が世論を形成する可能性もないとは言えない。

ただ一つだけ言える事は、
今のインターネットには遠大な可能性が秘められているという事だろう。
世界が、今巨大なパラダイムシフトを迎えている。

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